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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第27章 襲撃<肆>


珠世は注射器を取り出すと、朱紗丸の体の一部から採血する。それから薬を使い術を吸わせてしまった禰豆子を診る言った。

「頭の悪い鬼もいたものだな。珠代様のお身体を傷つけたんだ。当然の報いだが」

愈史郎は吐き捨てるように言うと、二人にじっとしているように告げ珠世の後を追っていった。
その場には汐と炭治郎、そして朱紗丸が残される。

「ま・・・り・・」
何処からかか細い声が聞こえてくる。二人が顔を上げると、朱紗丸だったものから聞こえてくるようだ。

「ま・・・り・・・ま・・・り・・・」
炭治郎が横を向くと、先ほど転がってきた毬がそのままになっている。彼は何か言いたげに汐を見ると、彼女は小さくため息をつき炭治郎を抱えて歩き出す。

「毬だよ」
毬を彼女のそばに置いて炭治郎は優し気な声色でそう言った。すると

「あそぼ・・・、あそぼ・・・」

消え入りそうなその声は、まるで幼い少女のようだ。たくさん人を食らい、殺めている鬼なのに。

やがて夜が明け、日の光が木々の間から漏れ出す。光を浴びた瞬間、朱紗丸の体が焼け灰となって空へ舞う。骨も肉も、血さえも何も残らない。
残ったのは彼女が身に着けていた橙色の着物と、毬だけだった。

炭治郎は泣きそうな眼をしながらその光景を見つめている。十二鬼月と煽てられ、欺かれ、そして呪いで殺されるという救いもなく、理不尽極まりない最期。
たくさんの人の命を奪った報いでもあるのか。炭治郎は納得ができないと言った表情でうつむいた。

汐はそんな彼をなんとも言えない表情で見つめていた。自分は炭治郎の様に優しくはない。同情なんてしない。けれど、何故この子は鬼にならなければならなかったのか。何故こんな仕打ちをされねばならなかったのか。そう思うと、彼女の胸も痛んだ。


ただ、一つだけ確信したことがある。

鬼舞辻無惨。奴は自分を慕う部下さえも、用済みとあればごみの様に簡単に捨てる。人でなし、本物の【鬼】であること。
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