第23章 遭遇<肆>
「それ以外に道がなければ、俺はやります。珠世さんがたくさんの鬼の血を調べて薬を作ってくれるなら、そうすれば禰豆子だけじゃなく、もっとたくさんの人が助かりますよね?」
そう言って珠世に顔を向けた炭治郎の顔には、屈託のない笑みが浮かんでいる。その表情を見た珠世は小さく息をのんだが、彼につられるように笑みを見せた。
それを見た炭治郎の顔が、瞬時に赤くなる。そんな彼を見た汐は、何だかどうしようもなく腹が立って炭治郎のふくらはぎを思い切り抓った。
「いででででででで!!!!」
突如襲った強烈な痛みに、炭治郎は悲鳴を上げ涙目になる。何をするんだと顔を向けると、汐は顔を思い切りゆがませたまま炭治郎のほうを見ようともしない。
「汐。いったいどうしたんだ?さっきからずっと様子がおかしいぞ?」
汐からは何やら不満の匂いが漂う。その意味が分からなくて炭治郎が問いただすと、汐はそれには答えずに珠世を見ていった。
「この雰囲気をぶち壊すようで申し訳ないんだけど、あんたに一つ、聞きたいことがあるの」
汐は表情を崩さないまま珠世を見据える。
そんな彼女の態度に愈史郎は「珠世様に何て口を利くんだ小娘!」と声を荒げる。
珠世は何かを察したように愈史郎を黙らせると、汐に向き合う。そして汐は意を決したように口を開いた。
「あたしの父、大海原玄海を知っているわね?そして、あの毒薬を送ったのも、あんたなのね?」
「え!?」
汐の言葉に炭治郎は目を見開いた。何故、ここで玄海の名が出てくるのか。そして彼に毒薬を送ったのが、珠世というのはどういうことなのだろうか。
困惑する炭治郎と、疑惑の目を向ける汐。珠世はしばらく黙った後、深くうなずいた。