第156章 不滅<壱>
その後、入浴を終えた汐は炭治郎と朝食を終えた後、散らかった部屋を二人で片づけた。
「忘れ物はないか?」
「うん、大丈夫」
二人は義勇の屋敷に向かうため、身支度を整え玄関を出た。
「じゃあ行こうか」
炭治郎はそう言って、汐に右手を差し出した。
「え?」
汐は驚いて炭治郎を見つめ、炭治郎は汐の顔をしばらく見つめた後、慌てて手を引っ込めた。
「ご、ごめん!俺、いつもの癖で・・・」
炭治郎は頬を赤く染めながら、顔を背けた。
「別に汐を子ども扱いしているんじゃなくて、あの、その・・・」
炭治郎は言葉が見つからず、しどろもどろになってしまう始末だ。
すると、汐は炭治郎の指に自分の指をからませた。
「!?」
炭治郎は驚いて汐の方を向いた。汐は顔を真っ赤にして、炭治郎から顔を逸らしていた。
「いいわよ」
「へっ!?」
「あんたと手をつなぐこと、嫌じゃないって言ってんの。それに、あたし嘘つきだから、しっかり捕まえていないと何処かへ行っちゃうかもしれないわよ?」
汐はそう言って炭治郎の目を見つめた。
「汐・・・」
炭治郎は一瞬言葉に詰まったが、汐としっかり向き合うとはっきりした声で言った。
「お前、まだどこか具合が悪いんじゃないか?しのぶさんに一旦見てもらった方がいいんじゃ・・・、いだだだだだだ!!!」
だが炭治郎の言葉は、突如走った痛みによって悲鳴へと変わった。
汐が炭治郎の右手を、思い切り握りしめていたからだ。
炭治郎は悲鳴を上げながら汐の顔を見て、ひゅっと喉を鳴らした。汐は目を血走らせながら、「ぶちのめすわよ?」と言わんばかりの表情で炭治郎を睨みつけていた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
炭治郎はミシミシと骨が軋む音を聞きながら、自分の軽率な発言を心から悔やむのだった。