第152章 真実(後編)<壱>
時は流れ二人は夫婦となり、二人の間には子供が生まれました。
ところが、子を産んだ途端に妻の身体は、虹色の泡になって消えてしまいました。
夫は酷く嘆き悲しみましたが、残された我が子と共に生きることを決意し、やがて大きな家へと発展していきました。
それからさらに月日が経ち。
岩だらけの島に、真っ黒な髪をした今にも死にそうな少女が一人打ち上げられておりました。
少女はサメに襲われ、大怪我を負ってしまったのです。
段々と動かなくなっていく身体に恐怖を覚え、それでも生きたいと願った彼女の目の前に、一輪の花が咲いていました。
茎もなければ葉もなく、泡のような花びらをつけた真っ青な、それはそれは不思議な花でした。
少女は花に手を伸ばし、その蜜を一口飲みました。
すると花は消え、少女の身体に異変が起こりました。あれ程の傷がすっかり治ってしまったのです。
しかし、そのせいか。少女の真っ黒な髪は、海の底のように真っ青に染まっていたのです。
それだけではなく、口を開けばガマガエルのような声と呼ばれていた声は、美しく透き通ったものになっていました。
それから何度か、青い髪の少女があちこちで生まれましたが、皆死ぬと泡になって消えてしまいました。
しかし、青い髪の少女に変えた花は、少女の身体を苗床に長い年月を生き永らえてきました。
そしてある時、その花はある者から名をもらうことになりました。
泡のような花びらに、美しい歌声を与える花。
その者は花に、こう名をつけました。