第149章 真実(前編)<弐>
「そ、そう言えば、もうすぐお昼だったわね。夢中だったから忘れてたわ」
「そうだな。戻ろうか」
炭治郎はそう言って立ち上がり、汐も一緒に立ち上がった。
「俺は昼餉の後義勇さんの所に行くけれど、汐も行くだろう?」
「ええ、勿論。って、ああ、そうだ!!」
汐はそう叫ぶと、悲鳴嶼に顔を向けた。
「悲鳴嶼さん。あんた最初の約束、覚えてるわよね?」
「約束?」
「ほら!訓練を終えたら"あれ"をしてくれるって言ったじゃない!」
汐がそう言うと、悲鳴嶼ははっとしたように目を見開き、そして困惑した表情へと変わった。
「ああそうか。"あれ"か」
「そう、"あれ"よ!」
「"あれ"って・・・?」
炭治郎は二人の会話の意味が分からず、首を傾げた。
すると、二人は少し頬を染めながら、もじもじと身をよじった。
「それは、その・・・。ここじゃ言えないのよ。恥ずかしくて・・・」
「???」
炭治郎はますます首を傾げるが、それを遮るように腹の虫が再び鳴いた。
「と、とにかく!お昼が終わったら悲鳴嶼さんの所に行って、その後に義勇さんの所に行くわ」
汐は顔を赤くしながら、炭治郎を追い越して歩きだした。
炭治郎は訳が分からず頭に疑問符を浮かべ、悲鳴嶼は何とも言えない表情で二つの背中があろう位置を見つめていた。