第149章 真実(前編)<弐>
「―陀仏、―陀仏・・・」
何処からか聞こえてきた声が、汐の意識を闇の中から導いていく。
それから顔に当たる冷たいものを感じて、汐ははっと目を覚ました。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」
そこには大きな人影があり、念仏を唱えながら自分を見下ろしながら水を注ぎこんでいた。
(え、あたし死んだの?ここは地獄?)
だがよく見てみれば、その人影に見覚えがあった。
「あれ、悲鳴嶼さ・・・」
汐はそう言うが悲鳴嶼は聞こえてないのか、水を注ぐ手を止めない。
止まらない水は鼻と口の中に絶えず流れ込み、汐はとうとう鼻の痛みと息苦しさを感じて噴き出した。
「ブッフォオオオオ!!!」
奇声と共に汐の顔面から汚い噴水が吹きあがった。
汐はそのまま鼻と口から液体を飛ばし、涙を飛び散らせながらのたうち回った。
激しくせき込み、気管に入った水を必死で吐き出す。