第148章 真実(前編)<壱>
「さて、あたしは少し休んだらまた訓練を再開するわ。あんたもこんなところで油売ってないで、訓練に戻りなさいよ?」
「分かってるよ。ったく、可愛げのない女だな」
「そんなもん、とっくの昔に投げ捨てたわよ。残念だったわね」
そう言いあった後、村田は汐にがんばるように言うとその場を立ち去った。
(そうね、村田さんの言う通りだわ。あたし、一番大切な人を疑うなんてどうかしてた)
汐は両手で頬を打ち鳴らすと、大きく深呼吸をして岩の前に立った。
(あたしは炭治郎を信じる。炭治郎が待ってほしいって言ってくれた言葉を信じる!!)
汐は再び両手をつくと、反復動作を開始した。
身体がかっと熱くなり、力が奥底から湧いてくる。
「ふんぐぉおおおおおお!!!」
男たちに負けじと大声を張り上げ、汐は再び岩を押した。沈黙を守っていた岩は、汐の気迫に答えたのか再び動き出す。
そして、開始から数刻後。
汐の岩は、目印を立てていた木の間を半分ほど超えたところで止まった。