第146章 本音<参>
それから数分後。
汐は塩漬けにしたヤマメを、汐は魚の身がくっつかないように楊枝で固定し、風通しの良い場所の木に吊るした。
「よし。後は一晩待てば完成よ」
汐はそう言って満足そうに笑った。
「へぇー、手際良いな、お前」
それを見ていた隊士が驚いたように言った。
「あたし海辺の村出身だから、時化で漁に出られないときのための保存食として、こうやって干物を作ってたのよ。まあ海魚だけどね」
汐はその光景を思い出すかのように目を細めた。
「さて、そろそろ炭治郎達の準備が終わると思うから戻りましょ」
「そうだな」
「あ、そうだ。もしも魚が一つでも足りなかったり、少しでもかじった後を見つけたら――」
汐はにっこりと笑って、奥にいる伊之助に視線を向けながら言った。
「そいつを干物にするからな」
「!?」
汐の発した言葉に、空気が一瞬で凍り付いた。感覚が鋭い伊之助は、その殺気に当てられ温まったはずの身体が再び震えだした。
その一瞬で、その場にいるものすべてが汐の前で粗相をしてはいけないと思い知ることになった。