第138章 千里の道も一歩から<参>
「こんにちはーッ!!今日からよろしくお願いします!!」
炭治郎は宇随邸に来るなり、屋敷中に響き渡るような声で高らかに挨拶をした。
「よォよォ!久しいな。お前もまた上弦と戦ったんだってな!あいつといい、五体満足とは運の強ェ奴だ」
そんな炭治郎に、宇髄は嬉しそうに言った。
「ここでなまった身体を存分に叩き起こしな!」
「はい、頑張ります!!」
炭治郎は拳を握りしめながらそう言った。
だが、炭治郎は何かを探すように視線を動かした。
「汐ならいねえぞ。お前が来る少し前に次の柱の所へ行っちまった」
「えっ、そうなんですか?残念だなあ・・・」
炭治郎はがっかりしたように眉根を下げた。
「・・・竈門。お前、汐から絶対に目を離すなよ」
「え?どういうことですか?」
炭治郎が尋ねると、宇髄は真剣な表情で言った。
「ああいう奴ってのは、いったん心が折れちまうと、落ちるところまで落ちちまう。もしもそんなことがあった時に、支えてやる奴が必要なんだ。だから、あいつのことを頼む」
炭治郎は宇髄から、僅かな悲しみの匂いを感じた。何故そのような匂いがするのかは分からないが、炭治郎は頷いた。
「勿論です。何があっても、俺は汐を守ります」
そう言う炭治郎の目は、決意と汐への確かな想いが見て取れた。
それを見た宇髄は、満足げにほほ笑むのだった。