第137章 千里の道も一歩から<弐>
翌日。
怪我が完治した汐は、柱稽古への参加を許可された。そして、今現在は宇髄邸の前にいる。
以前に蜜璃と柱間のあいさつ回りをしたときに一度訪れてはいるが、森に囲まれたかなり大きな敷地に驚いた記憶がある。
汐は意を決して、屋敷の門をくぐった。
「よォ、久しいな騒音娘!お前また上弦と遭遇したんだって?生き残るたぁ、悪運の強い女だな」
汐の顔を見るなり、宇髄は声を上げた。左目には装飾がされた眼帯がつけられ、左腕は斬り裂かれたせいで中指がなかったが、それでも元気そうだった。
「ちょっと。しばらく見ない間に人の名前を忘れたの?それとも、頭に行くはずの血液が明後日の方向に流れてるの?」
「相変わらず減らず口は一丁前だな、汐」
宇髄は微かに顔をしかめるが、心なしか嬉しそうだった。
そんなやり取りを見て、這いつくばっている隊士達は目を見開いた。
(あいつ、元とはいえ柱と対等に話してるぞ・・・?)
(いや、対等どころか言い合ってるぞ。何者だ、あいつ)
そんな彼等をしり目に、汐は宇髄を見上げながら言った。