第136章 千里の道も一歩から<壱>
冨岡義勇には蔦子という、年の離れた姉がいた。
彼等は病死した両親の遺産を使って、二人で慎ましく暮らしていた。
そんな蔦子が嫁ぐことになり、義勇はそれを心の底から祝福した。今まで苦労した分、姉には幸せになってほしかった。
しかしその願いは、蔦子が祝言を上げる前日の夜に無残にも砕かれた。鬼が蔦子と義勇を襲い、蔦子は義勇を守ってその命を落とした。
義勇は、姉を殺したのは鬼だと必死に訴えたが、誰も信じてもらえなかった。それどころか、周りの人間は義勇が心を病んだと思い、当方の親戚の医者の元へ送られることになってしまった。
だが、義勇はそれを拒みその途中で脱走するが、遭難してしまった。
その際にのちに師となる鱗滝左近次の知り合いの漁師に拾われ、鬼殺の路へと進むことになった。
その時に出会ったのが、義勇と似た境遇の同い年の少年、錆兎だった。
二人は意気投合し、辛い修行も二人なら乗り越えられた。義勇の傍にはいつも錆兎がいた。