第135章 為すべきこと<参>
「俺は最終選別を突破していない」
二日後のある日。二人の(特に汐からの)圧に負けた義勇は、そう呟くように言った。
「・・・え?」
「は?」
汐と炭治郎は顔を見合わせると、同時に義勇の方を向いた。
「最終選別って、藤の花の山のことですか?」
「そうだ」
義勇は目を伏せながら答えた。
「あの年に俺は、俺と同じく鬼に身内を殺された少年・・・、錆兔という宍色の髪の少年と共に、選別を受けた」
「!?」
(錆兎ですって!?)
その名前に二人は聞き覚えがあった。否、忘れるはずがなかった。
汐と炭治郎も、同じ名前の少年に出会ったことがあったからだ。
その時、義勇と錆兎は同い年の十三歳で、天涯孤独ですぐに仲良くなった。錆兎は正義感が強く、心根の優しい少年だった。
だが、その年の最終選別で命を落としたのは彼一人だけだった。
最終選別には義勇を含めて数人の参加者がいた。しかし、錆兎が一人でほとんどの鬼を倒してしまったため、彼以外が皆選別に受かった。
義勇は最初に襲い掛かってきた鬼に傷を負わされ、朦朧としていたところを錆兎に救われた。
そして彼は、他の参加者を救うために戦い、そしてあの手鬼に命を奪われたのだった。
「気づいた時には、選別が終わっていた。俺は、確かに七日間生き延びて選別に受かったが、一体の鬼も倒さず助けられただけの人間が、果たして選別に受かったと言えるのだろうか」
――俺は、水柱になっていい人間じゃない
そう言った義勇から後悔と悲しみの匂いがして、炭治郎の胸がきしんだ。