第18章 鬼と人と<参>
「あなたのかみのけ、とってもきれいなあおいいろをしてるのね」
「・・・お褒めにあずかり光栄、とでもいえば満足するの?」
汐はわざと皮肉めいた口調で告げると、鬼は笑みを浮かべたまま静かに口を開く。
「あなたのかみのけをにんぎょうにつかったら、きっともっとすてきになるわ。だから、おねがい」
――あなたのかみのけ、くびごとわたしにちょうだい?
「悪いけど、あんたにやるものはびた一文だってないわよ!!」
汐がそう叫んだ瞬間、どこからともなく大量の人形が汐に飛び掛かってきた。だが、先ほどと同じような動きをする人形に、汐はもう惑わされはしない。
「二度も同じ手を食らうと思ったら大間違いよ!」
汐はそう叫んで、人形に向かって刀を構えると、腰を低く落し大きく息を吸った。
――全集中・海の呼吸――
――参ノ型 磯鴫(いそしぎ)突き・乱打!!
汐の刀が目にもとまらぬ速さで何度も突きを放つ。その突きから生み出される衝撃波が、周りの人形を吹き飛ばした。
だが、汐は妙な手ごたえを感じた。さっきの人形は人形らしき硬さがあったのだが、今の人形のものはそれではなく、まるで柔らかい肉を突き刺したような感触だった。
その懸念は次の瞬間的中する。汐が貫いた人形がぐにゃりと形を崩し、突如鞭のようにしなり汐の首筋を狙ってきた。
汐はすぐさま頭を振ってかわすが、頬に一筋の赤い線が付いた。それからほかの人形たちは形を崩したまま、主である鬼の下へ集まっていく。
その時。汐は奇妙なことに気づいた。目の前にいる鬼なのだが、心なしか体が小さいような気がする。
否、鬼である以上体の大きさを変化させることは可能であった。現に彼女の友人竈門禰豆子が体を小さくしてはこの中に入っているのを見たことがある。
だとしても、それをもってしても目の前の鬼は小さかった。奇妙なほど。
――その理由は、すぐに明らかになった。