第134章 為すべきこと<壱>
「さっきから、うるせぇんだよ」
汐が振り返ると、玄弥が不機嫌そうな顔でこちらを睨んでいた。
「あら、あんたいたの?いたんなら会話に混ざればよかったのに」
「できるわけねぇだろ。この状況で」
玄弥はそう言って汐に背を向けた。その耳が真っ赤に染まっていることに、汐は気が付かなかった。
「さて、あたしはそろそろ部屋に戻るわ。あんた達もゆっくり休んで」
「ありがとう。お前もゆっくり休むんだぞ」
「そうさせてもらうわね。じゃあね、炭治郎、玄弥、後藤さん」
「おー、お大事にな」
汐がそう言って部屋に戻ろうとしたときだった。
「うおおおおお!!!」
窓の硝子が砕け散ると同時に、外から伊之助が雄たけびを上げながら飛び込んできた。
「ぎゃあああああ!!!」
玄弥を除く全員が悲鳴を上げ、先ほどまでの静けさはあっけなく崩壊した。
「ああーーーー!!伊之助・・・!!何してるんだ!窓割って・・・!!」
「お前バカかよ!!胡蝶様に殺されるぞ!!」
炭治郎と後藤が叫ぶように言うと、伊之助は両腕を振り回しながら「ウリィィィィ!!」と叫んだ。
そんな伊之助に後藤が「黙れ!!」と言いながら頭を叩くが、伊之助は一向に黙らない。
(部屋を別にしてほしい・・・)
玄弥は両手で耳を塞ぎながら、騒音から逃げるように布団に潜り込んだ。