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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第17章 鬼と人と<弐>


暗く広い部屋の中に、布がこすれるような音が小さく響く。
部屋の真ん中では一つの影が、何やら一心不乱に手を動かしている。
その影が手にしているのは、さび付いた一本の縫い針。そしてその針の穴には、血のように真っ赤な糸が通されている。

影はそのまま機械の様に手を動かし続ける。何度も、何度も、針を突き刺す。
突き刺すたびに、ぷつりという小さい音が何度も何度も響く。そしてそのたびに滴り落ちる、赤黒い雫――

――にんぎょうにんぎょうつくりましょう
あたまをつけておててをつけて
あんよもふたつつけましょう
きれいなきものもきせましょう
きれいなきれいなおにんぎょう
きょうはかみをつけましょう

部屋の中心で一心不乱に針を動かしながら、歌を口ずさむのは、先ほどの人形の主だろうか。楽しそうに歌を歌いながら、赤い糸を引く。
その時だった。

「お楽しみのところ、失礼するわ」

扉を開ける音とともに、その場にいないはずのだれかの声が響く。人形の主は背中を震わせながら、動かしていた針を止める。

「熱烈な歓迎をありがとう。だけど、あたしをもてなすには少しばかり礼儀が足りなかったようね」

声の主、汐はそういって口元に笑みを浮かべた。その体からは、僅かだが殺意が漏れている。

「礼儀知らずの悪い子には、お仕置きをしなくちゃね・・・」

汐の氷の様に冷たい声が、静かに響いた。
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