第134章 為すべきこと<壱>
「ほらよ。水、持ってきたぜ」
「何から何まで、ありがとうございます」
後藤から水を受け取った炭治郎は、笑顔で感謝の意を伝えた。
「汐の匂いがしますけれど、大丈夫でしたか?その、いろいろと」
「あ、ああ。とりあえず、黄色い奴は生きてたよ。大海原は着替えて来るって言ってた」
善逸の返り血が付いた服を、とは言えず言葉を濁す後藤に炭治郎は何かを察して口をつぐんだ。
すると、不意に嗅ぎ覚えのある匂いが鼻を掠めた。
(あれ、この匂いは・・・)
「お?誰か来たな。あいつか?」
しかし、病室に入ってきたのは汐ではなかった。その人物の顔を見た瞬間、炭治郎の顔に笑顔が浮かぶ。
「あーー!!鋼鐵塚さん!!」
炭治郎の視線の先に、刀を抱えた鋼鐵塚の姿があった。
炭治郎はあの後、汐達から鋼鐵塚の事は聞いていた。己の身を顧みることなく、刀を研ぎ続けたため重傷を負っていたことを。
その事をずっと心配していた炭治郎は、彼の姿を見て心から安堵した。
「怪我は大丈夫ですか、良かった!!」
だが、炭治郎は笑顔のまま顔を強張らせた。
鋼鐵塚の身体は小刻みに震え、心なしか息も荒い。
とても大丈夫には見えなかった。