第131章 光明<弐>
汐の新たな歌が半天狗を拘束する少し前。炭治郎は以前、善逸と技について語り合っていたことを思い出していた。
『雷の呼吸って、一番足に意識を集中させるんだよな』
善逸は磯部揚げ餅を旨そうに頬張りながら、唐突にそんなことを言った。
『自分のさ、体の寸法とか筋肉一つ一つの形ってさ、案外きちんと把握出来てないからさ。『それら全てを認識してこそ、本物の“全集中なり”』って俺の育手のじいちゃんが、よく言ってたなぁ』
その言葉を思い出した炭治郎は、筋繊維一本一本、血管の一筋一筋まで空気を巡らせ、力を足だけに溜めた。
溜めて、溜めて、そして一息に爆発させる。空気を切り裂く雷鳴の如く。
汐が新たなウタカタを放ち、鬼の動きが止まると同時に、炭治郎は雷神の如く一気に半天狗との距離を詰めた。
そして、真っ赤に燃える刀身をその細い頸に押し当てた。ミシミシと音を立てながら、刃が少しずつ食い込んでいく。
(行け!!行け!!今度こそ、渾身の力で・・・)
炭治郎は力を込めて、そのまま押し切ろうと歯を食いしばった時だった。
半天狗は頸をぐるりと炭治郎の方へ向けると、恨みと憎しみの篭った表情で睨みつけた。