第129章 強くなれる理由<肆>
(煉獄さん・・・!)
そして次に思い出すのは、煉獄が命を散らした後、汐が雨と涙に塗れながら自分の所へやってきた事。
(しおちゃん・・・。ごめんね・・・。私、死んじゃうかもしれない・・・)
心の中で汐に謝罪の言葉を述べる蜜璃だが、それを斬り裂くような声が響いた。
『心を燃やせ!!』
蜜璃がその声に導かれるように目を開くのと、目の前の鬼が吹き飛ぶのがほぼ同時だった。
「え・・・」
蜜璃は呆然と、目の前の光景を見つめていた。そこには、燃え盛るような炎のような音と、舞い散る火の粉。
そして、その場には決していないはずのその背中。
「れ、煉獄・・・さん?」
思わずつぶやいたその名前だけが、微かな静寂の中に響いた。