第128章 強くなれる理由<参>
不死川玄弥には目的があった。それは、何が何でも柱になる事。
柱になる目的は、風柱であり実兄である不死川実弥に認められることだった。
あって"あの時"の事を謝りたかった。
それは玄弥がまだ幼い頃。彼らの母親は、体の小さな女性だった。
しかしそれに反して、母親はよく働いた。少なくとも玄弥は、彼女が寝ているところを見た記憶はなかった。
父親はろくでなしという言葉が生ぬるく感じる程の、屑な男だった。妻や子供に暴力を振るい、暴れることに一切躊躇のない男だった。
そんな彼は人から恨まれ、刺されて死んだ。自業自得の最期だった。
ある日、玄弥は外出したきり戻らない母を、幼い弟や妹たちと待っていた。兄の実弥は母を捜しに行くと言って家にはいなかった。
日付が変わっても帰らない母親を妹は心配したが、玄弥はきっと戻るとなだめた。
しかし母の代わりに戻って来たのは、狼のような獣だった。
獣は一瞬で弟や妹たちを斬り裂き、玄弥の顔にも大きな傷をつけた。動きが素早く、玄弥も目で追うことができなかった。
あわよくば殺されると思った時、それを救ったのは兄だった。