第127章 強くなれる理由<弐>
「どいつもこいつも、この私をこけにしおって人間どもが!!まずは生意気な女!貴様を切り刻んでやる!」
激昂した玉壺は、鉄火場に壺の口を向けた。それを視界の端でとらえていた鉄火場は、自分の死を覚悟した。
(嗚呼、蛍・・・、私が殺されかけているというのに、貴方という人は。)
鉄火場は未だに鳴りやまない砥石の音を聞きながら、口元に笑みを浮かべた。
(でも、一つの事を極め抜く。そんな貴方に私は憧れ、そして好きになった。最期に見る光景が私の一番好きな、貴方の姿でよかった・・・)
鉄火場は目を閉じ、愛しい者たちの姿を思い浮かべた。
鉄珍、仁鉄、鋼鐵塚、里の者達、そして、汐。
(汐殿・・・、私は貴女に会えて、大切な気持ちを思い出すことができました。だから貴女も、私の分までどうか大切な人と、幸せに・・・)
壺の口から怪物が今放たれようとしていた、その時だった。