第127章 強くなれる理由<弐>
「は、鋼鐵塚さん・・・」
飛び散る血飛沫を見て、倒れ伏す鉄穴森は悔し気に歯を食いしばる。
しかし鋼鐵塚は、痛みに悲鳴を上げることも、血まみれの体に怯えることもなかった。
面が砕け、その素顔が露になっても、刀を研ぐ手を止めなかった。
(こっ・・・、この男、手を止めぬ!!)
ありえない事態に、玉壺の顔がさらに大きくゆがんだ。
「これ程の刀に自分の名を刻まなかった理由、この一文字、この一念のみを込めて打った刀なんだ。ただ一つ、これだけを目的として打った刀」
鋼鐵塚はその刀に取り憑かれたかのように、一心不乱に研ぎづつけていた。
まるで、その世界に刀と自分だけしかいないかのように。刀と一つになったかのように。
鋼鐵塚にはもう、その刀しか目に入るものはなかった。
(気にくわぬ・・・)
完全に自分の存在を蚊帳の外にされた玉壺は、湧き上がってくる怒りを全身から滲みださせていた。
(殺すのは造作もなきことだが、何とかこの男に刀を放棄させたい!!この集中を切りたい!!)
玉壺は再び手の壺から、化け物を呼び出し再び鋼鐵塚を斬りつけた。
それも一度ではなく、何度も、何度も。
そしてその斬撃の一つが、鋼鐵塚の左目を斬り裂いた。