第125章 招かれざる客<肆>
無数の針は屋根の上にいた無一郎を狙い、彼はそれを身を捻ってかわす。
別の金魚は汐に向かって針を放ち、何とか躱すものの針の一本が汐の頬を掠めた。
汐が顔を上げると、金魚はもう一度口を膨らませ別の方向を見ていた。その先には、鉄火場たちがいた。
「鉄火場さん!!」
汐が叫ぶよりも早く、無一郎が動いた。だが、それと同時に針が発射される。
その針は鉄火場たちに届くことはなかったが、代わりに無一郎の身体にいくつも突き刺さっていた。
「時透殿!!」
鉄穴森が小鉄を抱えたまま叫び、小鉄は凄惨な姿になった無一郎を涙をこぼしながら見ていた。
「邪魔だから隠れておいて」
無一郎は淡々とそう言うと、呆然とする汐に向かっていった。
「君、動けるならこの人達を隠して」
汐は頷くと、震えている三人を連れて森の奥へを避難させた。その間にも、無一郎は発射される無数の針を、刀で弾いていた。
「ヒョヒョヒョ、針だらけで随分滑稽な姿ですねぇ。どうです?毒で手足がじわじわ麻痺してきたのでは?」
毒という言葉に、無一郎の眉が微かに動いた。しかし、動揺する様子はなかった。
「本当に滑稽。つまらない命を救って、つまらない場所で命を落とす」
玉壺は無一郎を嘲笑いながら、そう言い放った。すると、無一郎の表情が大きく変わった。
玉壺の言葉に、既視感を感じたのだ。