第2章 人生初の大激怒
「なにすんだ…まったく…」
珠紀は冷静に思いながら全力疾走していた。
朝ごはんを食べてなんだか騒がしい縁側にいくと泥試合に巻き込まれて風呂に入っていたら遅刻したのだ。
ギリギリ間に合った。
「稲葉…天堂…お前らが遅刻なんて珍しいな?」
千晶が息を切らしている珠紀と夕士に言った。
「朝っぱらから泥試合に巻き込まれちまって…」
「そうそう…参加するつもりもないあたしまで泥だらけ。」
そういう2人に千晶はわけが分からないという顔をしていた。
その後に遅れてきた生徒たちを校門に入れてやる千晶を珠紀は無表情で見つめていた。
そんな珠紀を不思議そうに思いながらも夕士は
「天堂…はやく教室に行こうぜ。」
と声をかけた。
英語の授業…
青木の流れるような英語の朗読に涙する生徒もいる。
珠紀は千晶のことを考えていた。
結局…昨日も連絡は来なかった。
赴任してくる前はたくさん連絡してきてくれたのに…
このまま…自然消滅ってことないよね?
そんなのは嫌だけど…それもしょうがないことなのかもしれない。
色んな物を買い与えてくれた歳上の恋人。
欲しいと言えばどんな高価なものでさえ、買い与えてくれた。
別に買い与えてくれるからという理由で付き合っている訳でもない。
純粋に男性として好きだから付き合っているのだ。
確かに子供っぽいところがあるけど…大人の余裕があっていつも甘えているのは自分だといつも気付かされる。
幼い頃から祖母に
〖天堂家の女はいい殿方を捕まえて、天堂家の跡取りを産むことが習わしなの。感情なんてものは二の次。天堂家に相応しい淑女になりなさい。〗
と言われてきた。
感情なんて出してはいけないものだと思っていた。
歳上の恋人は言った。
〖そんなもんは知らんと言ってやれ。お前はお前らしく生きていけばいい。〗