第3章 ざわつく心
エルヴィンのいる団長室から出たアキは一人でキンモクセイを見に行くことにする。ダメ元でお誘いしたようなものたから、自分の為に時間を作ると言ってくれただけでもアキは嬉しかった。
外に出たアキはキンモクセイに近づくにつれ、いい香りが風に乗ってくる。
団長室を見上げると窓は開いてるもののもちろんエルヴィンは見えない。ハンジさんと仕事の話をしているのだろうと、キンモクセイにもっと近づく。
小さな花がいくつも咲いていてとても可愛らしい。
『いっぱい咲いていて可愛い。。一緒に…見たかったなぁ』
落ちていたキンモクセイの花を拾い、しゃがんだまま指先でくるくると回す。
すると、アキの横に人影が目に入る。
『エ――…って、何だ君かぁ』
思わずエルヴィンの名前を出しそうになったが、人影の主は同じ班の男の子だった。
『なんだよ、その反応。。アキがこっちに来るの見えてさ!この間のお礼ちゃんと言えてなかったし』
『ううん。無事ならそれでいいよ!同期もいっぱいいなくなっちゃったし、仲間はもう失いたくないよ』
『…訓練生の時からずっと見てた。俺もっと強くなるから…だから、アキには俺の傍で見ててもらいたい』
アキは手をギュッと握られ顔が赤くなる。いくらアキでもどういう意味か分かる。目を見つめられ逸らせなくなった。
『き、君の気持ちは嬉しい…。でも私は…ずっと何年も想っている人がいるから…応えられないの』
男の子の握っていた手が緩む。アキは気をもたすようなことは言いたくなくて、素直に好きな人がいることを伝えた。
『まぁ、フられるのは覚悟してたからな…。気持ち伝えれてよかったよ。これからも班員としてよろしくな』
少し寂しそうな顔をされアキは胸が痛くなるが、そのまま去っていく姿にもちろんっと明るく返事をした。
同期の姿が見えなくなるまで見届けたあと、再びアキはキンモクセイを見上げる。
少し強めの風が吹くと肩が冷えてアキはクシャミをする。
『もう秋なんだからこの時間は冷えるよ。それにしても驚いたな…アキに想い人がいたとはね』
『エルヴィン団長?!』