第2章 秋のはじまり
『おっと…顔が近かったかな。すまない…』
顔を赤くしているのに気づいたエルヴィンはアキの頭をポンポンとすると椅子に戻る。
『いえ!謝らないでください!嫌だったとかじゃないんです…』
『アキは優しいな…嫌じゃなかったらいいんだ』
『本当ですからね!あ、エルヴィン団長!良かったら休憩がてらに一緒にキンモクセイを近くで見ませんか?』
図々しいかな?と思いながらアキはちらっとエルヴィンを見ると、時計を見て考えている。
『時間は何とかなるか…。優秀な部下のお願いだ。一緒にキンモクセイを見に行こう』
『あ、ありがとうございます!』
少女のような無邪気な笑顔にエルヴィンも吊られて笑顔になる。
『君はこんな些細なことでも、いつも私に笑いかけてくれるね。』
『エルヴィン団長…?』
軽く片付けたエルヴィンは兵団マントを羽織直し、自分より小さなアキの傍まで近づくと肩に手を置く。優しさだけではないエルヴィンの眼差しにアキの心臓は早くなるばかりだった。
コンコン…
ノックの音が聞こえ、アキは慌ててエルヴィンから離れる。エルヴィンは軽くため息をすると、いつもの声のトーンでノックの主に入るよう指示する。
『いや〜エルヴィンごめんよ!この書類も提出するの忘れてて〜ってアキ?』
ひらひらと書類を揺らしながら入ってきたハンジに敬礼をする。そんなのいいからいいから〜とハンジに手を掴まれ敬礼を解除させられた。
『ハンジ、頼むから期限を守ってくれ…。回収してくれるアキの身にもなってくれよ?』
『団長、私は大丈夫ですよ!ハンジ分隊長はエルヴィン団長とお話することがあるでしょうし、私はこれで失礼します!』
『アキ…本当にすまない。近々時間を作るから、その時こそは一緒に見よう』
アキは笑顔で返事をすると二人に敬礼をして団長室から出た。
『あれー?エルヴィン、もしかして私ってタイミング悪かったかな?』
『……構わない。それで用件は何だ?』
『構わないって顔じゃないなぁ。話は壁外調査の資金面についてだよ』