第2章 秋のはじまり
アキが調査兵団に入団して初めての秋が訪れる。
ここ数ヶ月は壁外調査は資金難の為に実施されておらず、皆々訓練に励むものの兵団内は穏やかな雰囲気であった。
コンコン…
『…入りたまえ』
『エルヴィン団長失礼致します!リヴァイ兵長とハンジ分隊長から書類預かって参りました!』
『そうか、ご苦労。ハンジに至っては書類の回収にいつも手間取らせてすまないな』
書斎に座り書類に目を向けていたエルヴィンはアキの方に顔を上げ笑顔で書類を受け取る。
穏やかな笑顔をしているエルヴィンは、少しばかり疲れているようにも見えた。
『いえ…それぐらい気にしないでください。ハンジ分隊長も人間ですから、お手洗いに席を立った瞬間に駆け寄れば思い出して書面見てもらえますから』
『ははは。アキはやはり優秀だよ。ハンジの扱いはモブリット並みだな』
アキから受け取った書類をエルヴィンはチェックをした後、引き出しにしまう。
『……やはり、資金はまだ集まりそうにないですか?失礼ながら団長、お疲れのお顔されてます…』
心配そうな顔をするアキにエルヴィンは目を開くがすぐに笑顔で大丈夫だと返される。
『そう…ですか。……団長、もう秋になりましたね』
ふと窓を見ると目の前の木が黄色く彩っている。
『そうだな。季節が巡るのは早い。季節感を感じられるのな幸せなことだよ』
『…風もあまり強くなさそうですし、ちょっと空気を入れ替えましょう。窓開けていいですか?』
エルヴィンの許可を取るとアキは持っていた書類を置き、エルヴィンの座っている椅子の後側の窓を開ける。
ふわっと穏やかな風が入り、カーテンが揺れる。
『気持ちのいい風です。あ、団長!いい香りがすると思ったらキンモクセイがあったんですね!』
『ん?そうか、気が付かなかったな。手入れを任せている者が植えていたんだろう。』
アキが窓の下を指さすとエルヴィンはアキの隣に立ち、アキと同じ目線まで屈む。
まさかの距離感にアキは胸がキュンとなった。