第5章 10月14日
『君までも私の誕生日を知っていたんだな』
2人はキンモクセイの目の前のベンチに座り会話をする。
『当たり前ですよ!寧ろ団長の誕生日知らない人、この兵団でいないと思いますよ…。にしても、誕生日に壁外調査だなんて…でも団長が決めたことなので私たちは付いて行きます!』
トンっと軽く敬礼をする。
内心は折角心が繋がったのだから、ゆっくりと誕生日をお祝いしたい気持ちはあった。
一般兵には分からない、ずっと先を見ているエルヴィンに子供じみた事は言えないとアキは口を噤む。
『私の愛する人は理解がある女性で助かるよ』
『あ、愛する人って…照れます…』
『本当のことだよ。たが…ちょっと物分りが良すぎるようだ』
エルヴィンの長い腕で肩を引き寄せられエルヴィンの優しい顔が近づく。
アキはさっきのキスを思い出し頬が熱くなった。
『つい先ほどまでは上司と部下だったのだから仕方ないが、今はアキの彼氏だ。私は君の本音が聞きたい』
『あっ…はい…団長…。あの、私は2人でささやかでもお祝いしたいです。幹部の方たちもきっとお祝いするでしょうし、私とは出来たらでいいので…』
『アキは謙虚だな。うん、私もアキと誕生日を迎えれたら嬉しいよ。ハンジも祝いたいと言ってくれていたが早めに切り上げて、残りはアキと過ごそう』
『はい!』
アキは笑顔から幸せが溢れていた。
『名残惜しいがそろそろ兵舎に戻ろう。このままじゃ2人とも体調崩してしまうだろうからね』
アキは自分に掛けられていた兵団マントを思い出し慌ててエルヴィンに返す。
エルヴィンはありがとうと受け取ると自分に羽織った。
『これから壁外調査に向けてお互い忙しくなる。私も王都の方や内地に出向くことが増える為、あまり兵舎にいない。だから…』
『もう…エルヴィン団長分かってますよ。でもお気遣いありがとうございます。私の好きな人は調査兵団のエルヴィン団長ですからね!』
アキはエルヴィンに抱きつき、エルヴィンが自分の為に言葉を選んでくれているのが分かる。
それだけで愛されていると実感出来た。
『だけど、誕生日の瞬間は一緒に過ごしてくださいね。私も訓練に励みます!』
『あぁ、互いに尽くそう』