第4章 告白
『聞くつもりはなかったんだが、野暮なことをしてすまない。アキ、秋のこの時間は冷えるから私のマントを羽織りなさい』
『え!?そんな、気にしないでください。私は大丈夫ですよ…エルヴィン団長が風邪ひかれる方が困ります!』
エルヴィンは冗談ぽく、団長命令だ…と優しく笑いながらアキの肩に掛けてやる。
エルヴィンが先程まで羽織ってた温もりでアキは体も心も暖かくなる。
夕暮れ時のキンモクセイはエルヴィンの髪のように金色に輝いていて並ぶと絵画のような風景になる。
先ほど告白されて気持ちが落ち着かないでいるせいなのか、キンモクセイの香りに酔いだしたせいなのか分からない。
『私がずっと想っていたのは…エルヴィン団長です』
エルヴィンは驚いたように少し口を開ける。
『訓練兵なる前、エルヴィン団長をお見かけしてから、ずっと…ずっと想っておりました。調査兵団になったのもエルヴィン団長に会いたくて…少しでも近づきたくて実績もあげたくて…そんな兵士らしからぬ大義で…団長…申し訳ありません』
エルヴィンは黙ったまま俯いているアキを見下ろす。真上から舞い落ちたキンモクセイの花がアキの頭上に落ち、エルヴィンは摘むと話し出す。
『さっき、ハンジにアキはもう少し前線で戦ってもいいのでは?と提案があった。しかし私は最初それを許可しなかった。だが、今君の話を聞き全ての判断を変えることにする』
『……承知してます。こんな兵士として不謹慎な私にはもっと厳しく訓練して技術面、軟弱な精神も鍛え、人類の為に心臓捧げます!』
アキはエルヴィンから離れ、涙を流しながらも強い目でドンっと敬礼をする。
『……アキ』
『(涙が止まらない…団長に呆れられてもいい。前線の囮駒でもいいから私を使ってほしい。退団しろなんて言わないで…団長の近くにいたいよ…)』
敬礼している体は震えだし、目は涙で視界がぼやける。
涙でぼやけ過ぎた目は自然反応で瞼が閉じる。
頬には何度も涙が伝う。
強く握っていた拳も力が入りすぎて痛み出していた。