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【オビ】追い続ける【赤髪の白雪姫】

第5章 ラクスド








さや嬢の様子がどこかおかしいと、はっきり感じたのは


倒れる直前
お嬢さん達と別れて森をしばらく走った時だった




馬を休ませる事もせず
荒っぽい手網で森の中を駆け抜ける様子に


…何か異様なものを感じた




悩み事でもあるのだろうかと

楽観的に考えていた俺を殴ってやりたい




行きの時も背後に飛び乗っても上手く操っていたし
まあ平気だろうとさや嬢の後ろへ低めの枝から馬へ飛び乗った



”何かあった?”そんな言葉を心の中で用意して


飛び降りた俺の重みに驚いた馬は
大きく嘶き、前足を高くあげる




さや嬢は斜めに持ち上がった馬に


大きく揺さぶられて

手網をするっと滑り落とした




「…!…うっと!危ないっ…!」




俺は慌ててさや嬢の後ろから腕をのばし手網を掴み
馬を落ち着けるよう手網を引きながら歩みを止める


馬は主人以外の引手はごめんだと鼻息荒く抗議する

今は許して欲しい




「さや嬢?一体どうしたん……っ!?」




ぐったりと俺の胸元に倒れ込むさや嬢の顔を覗き込むと

さや嬢は真っ青な生気のない顔をして
ひゅーひゅーと浅い呼吸を繰り返していた



(なんだ、これ……)



額に触れると異常な熱さが手に伝わる

ガタガタと小刻みに震える小さな手


いくら名前を呼んでも返事はない。
完全に意識を飛ばしている


それにこれだけの熱で
汗すらかいていないのはなんでだ




「さや嬢!?さや嬢!」


『ぐっあ…!くっ!』




揺さぶった腕に生暖かい感覚がまとわりつく

ぬるりとしたそれは
さや嬢の服の下から染み出ているようで


血…?


後で殴られる事を覚悟して服を捲ると
放置された剣傷が黄色く膿み、衝撃で開いた傷口から血が溢れていた




「っ……!あの時のっ…」




俺は馬に手網を鋭くうち、とにかく早く早くと馬を走らせた








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