第3章 巳早からのオビ
さやの舌を優しく吸ったり
歯の裏側をちろりと舐められたりしている内に
段々と頭がぼーっとしてくる
今世で初めてするキス
その淡い快感に、抵抗出来ない
時々甘ったるい声が自分から漏れて
くちゅくちゅと水温が耳の奥に響く
『っ…は…っん…んんっ』
「っ…は」
ようやく唇が離された時には
酸素不足で頭は回らず
快感で体の力は抜けきっていた
オビはそっとさやの耳元に顔を寄せると
「続きはまた今度」
そう囁いて
木の上に飛び移り去っていった
『な、なんだったの…』
さやは
寝転んだまま空を仰ぎ、放心した
*
「…おい、さや!」
『うへい…』
気が付いた時には
辺りは夕焼けの空に変わっていて
さやの顔を覗き込むように腰をおった
ミツヒデの顔が見えた
さっきはもっと近い所に、オビの顔が…
あの熱を思い出すと
反射的に顔が熱くなってくる
「さや?」
『っはい!大丈夫!大丈夫!』
後ろにいた木々が心配そうに声をかけてくる
さやは悟られないように
急いで立ち上がる
服に付いた草を払い、2人の方に向き直ると
ミツヒデの顔に怒りマークがついている気がした
『あら、また怒ってるのミツヒデ』
「…はぁー。心配したんだぞ」
『ごめんなさい2人とも』
「次から居なくなる前に
声をかけてくれればいいから
ミツヒデ、そろそろ行かないと」
木々がそう言うとミツヒデがそうだなと返し
なんだかわからないがさやも
大人しく着いていく事にした
『ねぇどこに行くの?』
「不審者をひっ捕らえに」
『えぇっ!?それって襟巻きで顔隠した!?』
そうと木々に返され慌てるさや
今、オビに会えない
会いたくない
あんな事があった後だし
どうしたものかと考えても
長らくゼンの傍を離れた挙句
別行動するのをミツヒデが許すはずがない
さやは仕方なしに
2人の後を追った