第5章 Say goodbye
男たちはその様子に満足した笑みを浮かべながらも更に言葉を続ける。
「正規ギルドのおぼっちゃんは分かんねぇかな?俺たち闇ギルドの人間は暗殺だったり強奪だったりのクエストを受けててな。ノエル……だったか?そこの嬢ちゃんも所属してたのさ。俺らは来る者は拒まねえが足抜けは絶対に許さねえ」
ある者は拳をポキリと鳴らし、ある者は舌舐めずりをする。その様子を見てノエルはビクと体を大きく揺らした。ラクサスは咄嗟にノエルの肩を抱こうとしたが、ノエルは大袈裟に避けた。
「ご、ごめ……。ごめんなさい」
目には大粒の涙を溜めながらラクサスの方を見るノエルにラクサスは何も返すことが出来ずに立ち尽くす。
「盗みは飄々とやってた癖に殺しになった途端、逃げやがって。お前の魔法頼みだった俺らはお陰で全員お縄だよ。目的が盗みだと思われて5年で出てこられたからようやくお前に報復出来ると探してたが中々見つからなくてな……。まさか正規ギルドに入ってるとは。お前みたいな薄汚い人間が正規ギルドでやっていけるなんて思わなかったよ」
新聞に載ったお陰でようやく見つけられたと笑う男の言葉を聞きながら、ラクサスはあの時のノエルの様子を思い出した。出会った当初のような絶望の顔をしていたのだった。
「……どうすれば許してもらえますか」
「いや、だから許さねえよ。元の世界に戻れないように躾けてやる。ということでさ、兄ちゃん。コイツには兄ちゃんが守るほどの価値が毛ほどもないわけ。兄ちゃんに危害を加えるつもりはねえから、そのきったねぇ女を置いて行ってくれねぇか」
そう言って男はラクサスが掴んでいる手と逆の手を掴もうとする。その手をラクサスが叩き落とした。
「お前ら下衆とコイツを一緒にするんじゃねえ!!」
そしてラクサスは男たちに向かって特大の雷を放つ。男たちは避ける間もなく雷を浴びてバタバタと倒れていった。
「大丈夫か?」
「……………………うん」
男たちを評議院に突き出した後、クエストを中止しラクサスはノエルの手を引きながらフェアリーテイルに戻ろうとする道中、休憩にと人気のない川の近くで座るとずっと黙り込んでいたノエルがおずおずと口を開いた。