第4章 Cry in the cathedral
雷撃はミストガンの被っていたフードを吹き飛ばし、素顔が顕になる。
「ジェラール!?」
「お前…」
前にいる2人から驚きの声が上がる。こちらの世界の彼と知り合いであったのだろうという事がノエルの目には見て取れた。
だから頑なに顔を隠してたのね…。
「ジェラール、生きて…」
ノエルの方からは見えないが声の震えから、エルザにとって特別な人であるのは揺るがぬ事実だろう。
「おう?知ってる顔だったのか」
「ど、どうなってんだ。ミストガンが、ジェラール!?」
「…ジェラール」
膠着状態の中やっとエルザが声を絞り出した。なぜ、どうしてという感情がその言葉からひしひしと伝わってくる。
「エルザ、貴方にだけは見られたくなかった」
「え?」
「私はジェラールではない。その人物は知っているが…。私ではない」
動揺と愁いがこの聖堂をより張り詰めた空気に変える。誰も動けないまま一瞬の時が過ぎた。
「すまない、後は任せる」
「っおい!?…だぁ、ややこしい。後回しだ」
名前の通り霧となり姿を消したミストガン。それを引き止める術はなく、エルザとミストガン、そしてジェラールという何者かの問題はいつものように先延ばしになるのだった。
「ラクサス、勝負しにきたぞ!エルザ、いいよな。俺がやる」
「…うあぁぁぁぁ!!」
「エルザ!?」
先程の状況から呆けているエルザはラクサスの雷撃を避けも出来ず、その攻撃もろに食らう。
「似合わねぇ面してんじゃねぇよ、エルザ」
「止めて!!」
エルザの前に出て雷撃を受け止めるノエルにラクサスは攻撃の手を緩めることもせず、雷が白の光に吸い込まれる状況が続く。
「ちっ…」
不毛な時間だと気づいたラクサスは攻撃をやめノエルを睨みつける。ノエルも負けじと咎めるように見つめ返せば、少しの無言が広がる。先程まで相手にされていなかったナツが焦れてラクサスに突っかかった。
「ラクサス!!俺が相手するって言ってんだろ、この野郎!!」
「ん?いたのかナツ」
「なっ…!!ナメるのも大概にしろよ。俺と勝負しろや、ラクサス!!」