第2章 Re:birth
「お腹空いてるじゃろ。好きなだけ食べなさい」
目の前に出されたご馳走の数々に遠慮していた彼女だったが、きゅうと小さな音が何処からか響き彼女が俯いた。小さい身体がよりこじんまりし、その姿にラクサスに庇護欲が湧く。
「お前が食べないなら俺が貰う」
そう言ってラクサスが近くにあったローストビーフをフォークで取ればおずおずと手元のサラダに手をつけ始める。最初は少しずつだった量が徐々に増えていく様子に面白くなってラクサスが笑えば、彼女のリスのように物を詰めていた頬が赤くなった。
各々が飾り付けや食事、ダンスなどどんちゃん騒ぎし緩やかな時間が流れていった後、カルディア大聖堂にある大時計から0時であることを告げる鐘の音がギルドホール内にも響いた。
普段はとっくに自分の部屋に戻っているラクサスも雰囲気に釣られて和やかになっていく彼女に合わせてどんちゃん騒ぎを眺めながら同じテーブルに着いていた。
「……なあ」
最後にケーキを口に頬張る彼女にラクサスは声をかける。もぎゅもぎゅと擬音が聞こえそうな程口いっぱいにケーキを詰めた彼女は呼ばれたラクサスの方を向いて首を傾げた。
「名前が無いなんて呼びづれぇ」
「何か良い名前は無いのか?」と言うラクサスに傾げていた首をもっと捻るが何も出てこない。その生ぬるい空気に焦れてラクサスは声を荒らげた。
「ああっ!!もう適当で良いんだな!!」
そう言ってぐるりと部屋を見渡し、
「お前の名前はノエルだ」
彼女を指差す。キョトンとする彼女に「文句は受け付けねぇ」と言えば彼女は小さな声で呟く。
「……私の名前はノエル」
満面の笑みを浮かべるノエルの眸には燭台の明かりのように暖かなオレンジが灯されている。ラクサスはその輝きに見蕩れていた事に気づき、慌てて立ち上がり目を背ける。
「俺は寝る!!後はじじいにでも聞け」
ラクサスが1人ギルドから出ていく姿をノエルは嬉しそうにケーキを食べながら見送り、マカロフからヒルダの仕切る寮の一部屋を貸し与えられた。
そしてその数時間後のクリスマスパーティにてノエルは一緒に過ごしていたカナから食べていたケーキの名前が《ブッシュドノエル》だというのだと教えて貰ったのだった。