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【R18】割れたリンゴ【FAIRYTAIL】

第1章 Prologue


昼前の礼拝が終わり続々と教会から人が出ていく中、その列に紛れて白髪の少女は駆けていく。1番高くに上った太陽がその髪を照らしキラキラと輝く。その背中を彼はずっと見つめ続けた。

「どうか、己の意志で選ばなければならない最期に悔いが残らぬよう…。どうか貴女様にとって救うべき世界でありますようにお祈り申し上げます」

教会の神父は涙を流し彼女の行末を案ずる。数年後か、はたまた数十年後か必ず訪れる未来を想って祈ることしか彼には出来ない。



『貴方様にはキセキを軌跡に変える力があるのです』

そう彼はベリルに告げた。

『キセキ?』
『そう貴方様の願った奇跡は全て確実に起こる。もしくは《在った》事となる。そしてその事実は軌跡を創り出す』

ベリルの首を傾げた様子に彼は詳しく説明を入れたが余計難しくベリルは更に首を捻ることになったが、要するに《願った通りの力を使える》らしい。

『なので貴方様がユラ家にされたことを無かったことにする事だって可能です。貴方様が強く願えば、強く想えばより強い力となって奇跡を起こせます』

その言葉にベリルは戸惑う。しかし思い当たる節があった。屋台の店主の腕が飛んだ時ベリルは思っていたのだ。《放して》と。それと同時に掴まれた腕の感触が無くなった。あれが助けてくれたのではなく、自分の力だとすれば…。

すべて無かった事に。それが出来ればどれほど良いだろう。

ベリルは自分のお腹を軽く撫でた。此処には自分の子がいるらしい。あまりにも実感が無さすぎる。けれどもここ数日の体調の悪さやユラ家の態度を見ればそれが本当であることは一目瞭然であった。

結局ベリルはどうするのか決められなかった。怖かったのだ。子供の存在を《無かった》ことにするなど。自分には軽はずみに生命を消す資格なんて無いのに。

だから子供の成長を、時を止めた。

産むも消すも、決められる日が来るまで。そう願った。

そして走った。神父の元を、あの教会から出て。もっと遠くへ、ユラ家の目が届かないように。

走った先は港だった。神父が言うにはこの大陸の他にも幾つか大陸や島があるそうで、そこに行けばユラ家の力は及ばないらしい。船に乗って何処か遠くに逃げる。そして自分の目で色んな物を見るのだ。自分で感じて、自分で決めて、自分で生きていく。

それがベリルの願いであった。
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