第10章 標的10 お医者さん
キーン コーン……
授業終了の合図が鳴る。
ある者達は教室に居残って雑談をし、ある者達は部活や委員会へと急ぐ。
皆がそれぞれの行動をとる中、綾里と綱吉はいつものように2人で帰宅しようとしていた。
「あれ?」
―――校舎を出てすぐのことだった。
綱吉が突然、クラッとふらつく。
すぐに気づいた綾里は、綱吉を支えた。
「なんか体ダルいや……カゼでもひいたかな……」
「大変、早く家に帰ろう!」
自分の事のように心配してくれる綾里を見て、綱吉はとても嬉しそうに微笑む。
(やった、これで綾里に看病してもらえる!)
綱吉はふと、ある事を思いつき綾里に気づかれぬよう、ニヤリと口元を上げた。
「……ごめん。オレ、もう駄目かも……っ」
「綱吉!?」
大袈裟に咳をして倒れこむ綱吉。
綱吉は綾里の手をぎゅっと掴み、見つめた。
「実は、ずっと前から病気だったんだ……(病名は恋の病だけどね)」
「そんな!? 重い病気……なの?」
幼馴染の魂胆に気づかず、瞳を潤ませる綾里。
綱吉は真剣な表情で頷く。
「うん、どうしようもないくらいにね (オレは綾里が好きなんだよ)―――でも、1つだけ助かる方法があるんだ」
「何!? 教えて!!」
「オレにキスしてよ」