第12章 標的12 体育祭
呆気なさ過ぎる終わり方に全員無言になった。
(ま……負けちゃった~~~~~~!!)
「おいおい敗軍の大将が ただで帰れると思うなよ」
「えっ」
さっき踏まれた恨みもあるのだろう、敵チームがじりじりと綱吉を追い詰める。
今にも一斉に綱吉に殴りかかってきそうだ。
「いや…あの」
綱吉はあんな終わり方で負けたのがショックで、すっかり魔王モードが解けてしまっている。
けれど顔を青くして怯える綱吉のもとに、『救世主』 が駆けつけた。
「お昼にしましょうっ!!」
―――それは重箱を抱えた綾里だった。
(綾里……!?)
綱吉は 敵チームから自分のことを守ってくれるように前に立った綾里を 驚きながら見つめる。
「思えば私達、お昼ご飯まだでしたよね!私お腹空いちゃったなー、うん、決めた!ご飯にしよう!」
自分が突然割り込んで、無茶苦茶なことを言っているのに気づいているのだろう、綾里は額に汗を滲ませながら、それでも綱吉を守る為、敵の目を逸らそうと頑張る。
「私もお腹空いちゃった! ね、ハルちゃん!」
「はい! ハルもお腹ペコペコですー。ここにレジャーシート敷きますね!」
「(京子ちゃん、ハルちゃん……!)それじゃあ私はお弁当を並べるよ」
加勢に来てくれた京子とハルに感謝しながら、綾里は親友達と共にお昼ご飯の準備を始めた。
「オレも仲間に入れてくれよ。 おー相変わらず綾里の弁当はすげーのな」
「極限にうまそうだぞ!」
「綾里さん、オレもご一緒していいですか?」
「もちろん! 皆で食べよう」
そこに山本・了平・獄寺も加わった。
楽しそうに準備する仲間達を綱吉が1人ぽつんと見ていると、綾里が優しく微笑んだ。
「ほら、綱吉もこっちにおいでよ」
他の皆も綾里と同じように優しい表情で綱吉が来るのを待っている。
「うん……!」
綱吉はさっきまで抱えていた嫌な事をすっかり忘れ、仲間達との昼食を楽しんだ。
明るく温かなその空気は遠巻きに見ていた生徒達にも伝わっていき、やがて全体が賑やかな昼食タイムになる。
「思い出に残る体育祭だな」
リボーンが笑いあっている綱吉達を見て、どこか嬉しそうに呟く。
そして自分も昼食に参加すべくカメラのスイッチを切るのだった。