第63章 幸せをありがとう
第63章 幸せをありがとう
数年後─
「はーい、空くーん。ママですよぉ」
「琴乃、そろそろそのネタやめたら?」
空が産まれた直後から、自分をママだと思い込ませようとしてきた琴乃
やれやれと言った表情の紫苑
当の本人は、琴乃に遊んでもらえてきゃっきゃしている
「空ー、お腹にタックルしちゃダメっスよ」
「だーめ?」
「琴乃サンとママのお腹には、赤ちゃんが居るんス。タックルするのは、パパと平子サンにしといてね」
あれから色々あった
黒崎くんが失った死神の力
その力を、喜助さんが作った特殊な刀で取り戻すことに成功した
私も微力ながら、その刀に力を込めた
そして見えざる帝国の急襲…
たくさんの、本当にたくさんの犠牲者が出た
空を妊娠中だった私は、闘いに参加させてもらえなかった
それどころか喜助さんは私に危険が及ばないように、私を何か良く分からないもので包んで、別の次元に飛ばした…
王印も持っていないのに、一体いつの間に次元まで扱えるようになったのか…
"ボクを信じて…絶対、絶対迎えに来るから"
行かないで
なんてもう、昔みたいに言えなかった
きっと喜助さんは行ってしまう
喜助さんにしか、できないことがある
寂しい、不安、怖い…
全部、全部飲み込んだ
大丈夫
喜助さんは絶対、迎えに来てくれる
そうしてどれくらいの時が経ったか、分からなかった
急に何か強い力に引き寄せられて、目を開けたそこには…
「マユリさん…?」
「全く、相変わらず不愉快な夫婦だヨ」
そこは技術開発局だった
訳も分からずマユリさんについて行くと、瓦礫だらけの尸魂界…
大きな戦いがあったことは嫌でも分かる
「あの、喜助さんは…」
「行けば分かるヨ」
最悪の事態、が頭によぎった
心臓が震え上がって、足取りが重くなる
そしてついたのは、四番隊だった
「勇音さん!」
指揮をとって隊士たちの治療にあたっている勇音
目が合うと走りだし、紫苑を抱き締めた
「紫苑さん!よかった…無事だったんですね!」
「勇音さんも…ねぇ、喜助さんはどこ?」