第62章 新婚の在り方
第62章 新婚の在り方
1年後─
「紫苑、あのサンプルはまだかネ?」
「はい、今できます」
「浦原四席、これどうしたらいいですかぁ。私もう頭パンクしそうです~」
「私やっておくから、置いといて」
「紫苑、試験管Bを持ってこいと言っただろう?」
「はい、只今!」
一通り仕事が片付いた頃には、時計はもうとっくに門限を越えていた
「はぁーーー」
ソファに倒れこむように寝そべると、阿近が飲み物を両手に近づいてきた
「悪ぃな紫苑」
片方の飲み物を紫苑に渡すと、すぐ近くの壁にもたれかかる阿近
「家に帰りたい…喜助さんに会いたい…」
「もうある程度片付いただろ?」
紫苑はまたひとつ、ため息をついた
「十席の子の書類やらなきゃだもん」
「明日にすればいいじゃねぇか」
春を前に護廷十三隊は毎年恒例の人事異動
十二番隊は人手不足でバタバタしていて、現世調査任務の紫苑も1ヶ月程前から駆り出されていた
「明日は明日でやることがいっぱいなのー」
あれをして、これをして…と頭の中でスケジュールを組む
「まぁ、春になったら落ち着くと思うから」
いつも休憩するときは決まって煙管を取り出す阿近がそれをしないのは、喘息が治ったからとはいえやっぱり私に配慮してくれているんだろうか
「あと2ヶ月もあるじゃん…」
「新婚なのに悪ぃな」
阿近は残っていた中身を全て、飲み込んだ
「新婚ていつまで言えるのかな?」
「さぁな」
喜助さんと結婚してから1年
私は浦原紫苑になった
仕事でも浦原に変えて、浦原四席なんて呼ばれると1年たった今でもなんだかくすぐったい
喜助さん寂しがってないかな…
紫苑は残業を決め込み、喜助に連絡を入れた