第61章 アナタが笑顔なら 後編
全く紫苑のやつ
お節介にも程がある
「面会だ。顔を上げろ」
面会…?私に?
だって私はもう収監されるのに…
もしかして…!
「喜助…!」
「じゃなくてごめん」
「……………リョウ?」
驚いた
ちょっと切なそうな、だけど嬉しそうな顔で私を見るのはもう100年以上も前に付き合っていた恋人
私のことなんて、とっくに忘れていると思っていた
「な…にしてるの?ここで」
カシャンと音を鳴らして鉄格子を掴むリョウ
「ずっと、探していたんだ……ずっと」
そしてそれを掴んだままヘナヘナと座り込む
「良かった…っ…また会えて…!良かった…生きていて…っ」
男のくせに、本当は涙もろいところ
ちっとも変わってない
「なんで…泣いてるの?」
「麻美に会いたかったからだよ。会えて嬉しいんだ。100年以上も…探していたから」
なんで
なんで…私なんかを…
「バカじゃないの?!もう100年も経っているのよ?なんで、いつまでも私のことなんか…」
「好きだからだよ…」
「リョウ…」
「忘れられないんだ。100年たっても…麻美のこと、愛してたから」
違う、バカなのは私だ
100年変わらない愛があること
自分が身をもって分かっているのに
「でも…私は…喜助のことが好きで…」
「それでも良いからさ、麻美があの人のことを思っていてもいいから…少しずつでいいから、また俺のことも見てくれないかな」
どうしよう
嬉しい…
ずっと、喜助に愛されたかった
だけど喜助がくれた口づけは
ただの遊びで
捌け口で
私が無理やり奪った紛い物で
喜助は一度だって私を、愛してはくれなかった
愛されたくて、意地になっていたのかもしれない
「…私ね、もうすぐまた居なくなるの」
なのになんであなたは、裏切った私に無償の愛をくれるの?
「…俺、いつか隊長になって、必ず麻美のこと出してあげるからさ!」
「リョウ…」
「だからそれまで、待ってて…」
「……ありがとう」
麻美の目から溢れた涙が、床を滲ませた
鉄格子の隙間から手を伸ばすと、ひんやりと冷たくて白い肌を包み込んだ
「愛してるよ…麻美」
「……うんっ」
頬にのせられたリョウの手に自分の手を重ねた
子供みたいに泣きじゃくった