第59章 Swear eternity
「…え」
ベッドには紅い薔薇の花びらで形作られたハート
脇にはハートの風船がたくさん浮かんでいて…
大きな紅い薔薇の花束を持った喜助さんが立っていた
「誕生日プレゼントっス」
「ありがと…」
こんなに大きな花束…
見たことがある
勇音さんが持ってきた結婚事情の本に、載っていた
さらっと見ただけだったけど、これは
「これって…」
「108本あります。意味、知ってます?」
じんわり涙ぐむ紫苑
片手で重い花束を必死に抑えて、もう片方の手は口を覆っていた
「知ってる…っ」
「その花の中に、もうひとつプレゼントがあるんスけど」
紫苑は涙を軽く拭って、花の中を探す
それはすぐに見つかった、小さな箱
「貸して」と言われ手渡した箱
「本当は、100年前のあの日…これを渡そうと思っていたんス」
「100年前…」
紫苑の記憶がよみがえる
"明日、仕事が終わったら渡したいものがあるんス"
「あの時の…」
「あの時から、ボクの心はもうずっと決まってます。ずっと、これを渡したかった…100年も待たせてごめん」
紫苑の瞳が震える
喜助の手によって箱が開かれる
「愛してる。今までもこれからも、永遠に愛してる…」
もう涙でよく見えない
拭っても拭っても溢れてくる
それでも、しっかりと喜助さんの目を見つめた
「ボクと結婚してくれませんか?」
喜助さんはいつも、私の欲しい言葉をくれる
それは今日だって変わらなくて
人生で一番欲しかった言葉を
本当はずっと待ってた言葉を
「夢じゃ…ないっ?」
「夢じゃないっスよ」
「本当に私なんかでいいの?」
「アナタがいいんです」
「ほんと…にっ」
「返事を、くれませんか?」
呼吸を整えて、紫苑は答えた
「喜んでっ」
リングケースから指輪を取り出す喜助さん
私の左手を取って、スッとその指輪をはめる
薔薇の花束を置いて、抱き締められる
「一生、アナタを幸せにします」
見つめられたのは一瞬で、唇を奪われた
優しいキス
全てを包み込むような
幸せを注がれるような
そっとベッドに寝かされる体
沈むスプリング
くしゃっと音をたてる花弁