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With me

第55章  俺と付き合ってくれねぇか?



第55章 俺と付き合ってくれねぇか?



「卵と牛乳と、ホットケーキミックス…」


すっかり元気になった紫苑とボクは、琴乃サンに頼まれたお使いにきていた


「夜一サン最近ホットケーキにハマってますからね」

「美味しいよね、簡単だし」


なんだか新婚サンみたいっスね

町がキラキラして見えるっス


「紫苑?」


ふと、隣に居たはずの紫苑の姿が見えなくて後ろに目をやる

メモを手に持ちながら立ち止まって、一点を見つめている


紫苑の視線の先には、家族連れの姿

父親と母親と、手を繋いで歩く子供

どこにでも居そうな家族だけど、絵に描いたような幸せそうな家族

紫苑は歩くのも忘れて目を奪われていた


私も昔、あの真ん中の子供と同じだった


一人娘だったから大切に大切に育てられて、いつも優しい笑顔のお母様とお父様

大好きだった


「紫苑」


家族がいるって、幸せだった

もっと、もっと親孝行してあげたかった


「紫苑」

「!あ、ごめんなさい」


二回声をかけてやっと歩き出した紫苑

何も言わない紫苑に、少しだけ胸が痛む

きっとあの家族連れを見て、色々と考えてしまったのだろう


もう少し

もう少し待っててね


「なにか言った?」

「いーえ、何も」

「あ、私お財布忘れてきちゃった」


紫苑がバッグの中をゴソゴソと探す


「さっきのスーパーっスか?」

「多分…私戻って探してくるね。喜助さん、先に帰ってて」

「でも…」

「もうすぐお得意さん来る時間でしょ?私なら大丈夫だから」


嫌だ

物凄く嫌だ

けど大事なお客様を蔑ろにもできない


「…財布見つかったら、すぐ帰ってくるんスよ」

「はーい」


心配そうな瞳の喜助を横目に、紫苑はスーパーに向かった


恐らくレジでお金を出してそのまま置いてきてしまったんだろう

会計をした店員さんに声をかけると、サービスカウンターに案内された


「こちらでお間違いないですか?」


忘れ物でとどけられていた財布は、無事に紫苑の手に戻ってきた


「良かったー…」


さ、早く帰ろ

紫苑は帰り道を歩き出した


ポツ─ポツ─

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