第53章 私を忘れないで…
怪しい
分かりやすく怪しい
しばらく喜助を見つめていた紫苑に気づいた喜助は、ごはんを取ってくるといって部屋をでようとした
「あ、浦原さん。ご飯持ってきましたよ」
ずっと隊長って呼んでいたから、なんだかまだ違和感がある
私が居なくなってからの詳しいことは真子に聞いた
紫苑はその時大分やつれちゃったみたいで、でも浦原さんが支えてくれたらしい
やっぱり紫苑には浦原さんが必要だと思う
「ありがとう、琴乃サン」
喜助の耳にそっと顔を近づけた
「で、浦原さんは紫苑といつ結婚するんですか?」
その時喜助が後ろ手に襖をピシャッと閉めた
「琴乃サン、少し声が大きいですよ」
凄まれても怖くない
ていうか割りと小声で聞いたんだけど
「いつまでこのままで居るつもりですか?100年もたってとっくに結婚してるかと思ったのに…それとも紫苑と結婚する気ないんですか?変わってないですね。相変わらず焦らしてばっかいると、一護に取られちゃいますよ」
「あるに決まってるじゃないスか!」
「声が大きいですよ」
琴乃はニヤりと、さっきのお返しとでも言わんばかりに喜助を見た
喜助は思わず手で口を押さえた
「なに~?喧嘩してるの?」
紫苑がゆっくりと襖を開けると、すかさず喜助が出入口を塞ぐ
「してないっスよ。ほらほら紫苑は寝てなきゃ。さ、戻って戻って」
「ん~なんか、喜助さんさっきから怪しい…」
琴乃は意味ありげにニヤニヤしているし
「怪しくない怪しくない」
喜助は紫苑の背中を押して布団へと戻した
「紫苑もう少しご飯食べる?」
琴乃から受け取ったお盆を文机に置いて、少し頬を膨らませている紫苑を見る
「隠し事は嫌」
上半身だけを起こして、ムスッとした表情
それすらも可愛いと思ってしまう
「ごめんね。紫苑のことびっくりさせたいから、内緒にされててくれる?」
「びっくり…?」
ドッキリでも仕掛けようというのか
なるほどそれなら琴乃がニヤけてた理由も納得がいく
…なわけないか