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With me

第53章  私を忘れないで…



第53章 私を忘れないで…



「た、ただいま…」


夕陽がほぼ完全に沈んだ頃

台所では琴乃が、鉄裁の夕飯の支度を手伝っていた

店仕舞いを終えた平子が、台所に顔を出した時、後ろから弱々しい声が聞こえた


「紫苑!!」


近くにいた平子よりも早く反応し、台所からでてきた琴乃は紫苑に思い切り抱きついた


「琴乃…っ」


最後があんな別れ方だったから、無事かどうか心配だった

今までの、色んな思いが込み上げてきて、二人は言葉も交わさずに暫く抱き締め合っていた


後ろで微笑む喜助に平子が近づく


「で、紫苑どこに居ったんや?」

「ちょっと、過去に行ってたみたいっス」

「過去ォ?」


平子はよォ分からんと言いたげに、喜助から視線を外した


「まァなんや…良かったな」

「平子サンも」


亡くなったはずだった恋人が、戻ってきた

嬉しいに決まってるっスよね

ようやく心から祝福してあげられる


「琴乃サンはこれからどうするんスか?」

「まだ処遇決まってへんねんけど、まァ…俺次第やな」

「と言いますと?」


平子はまだ内緒やからな、と口元に人差し指をたてた


「実はな、隊長の話が来てんねん。五番の」

「…戻るんスか?」

「俺は戻ってもえぇかなって思っとる。けど、反対意見も多い…せやから、まだ正式な申請じゃないねん」


喜助はそういった考えが、尸魂界にあると知って少しだけ…本当に少しだけ心が軽くなった


自分のせいで彼らの運命を、ねじ曲げてしまった


「他の奴らにも同じような話が来とる」


それが、また護廷十三隊に戻ることができるかもしれない…

ボクのやってきたことは、少しでも意味があったのかと、少しばかりスッキリした


「俺が護廷に戻れるんなら、琴乃も連れていく。もし、アカンなら現世で暮らす。まァ、琴乃も護廷に戻れるとは限らへんけど…」

「大丈夫っスよ…きっと」


積もる話はたくさんあるみたいだけど、琴乃サンはご馳走にしなきゃ!と台所に戻っていった

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