第52章 今、誰の隣に居ますか?
第52章 今、誰の隣に居ますか?
「ったぁ……」
ドスン…と低い音をたてて、落ちた
どうやら地面より少し高い位置に出たらしい
重力で叩きつけられた
お尻の下にはお世辞にも柔らかい…とは言えない敷き布団があった
「どこだろう…此処」
誰かの部屋…?
確か、ネックレスが割れて、琴乃が記憶を取り戻して、だけど霊圧が押さえきれなくなって……
そしたら目の前が真っ白になって、ぐるぐると目が回って、気づいたら此処に来ていた
「…こんな時にっ…!」
卍解のエネルギーは光に取り込まれたと同時に霧散してしまったみたいだけど、その力の代償は今回も例外なく襲ってきたらしい
瞼が段々と重くなってくる
こんな何処かもわからない場所で…眠るわけには…
瞼が完全に落ちる前に見た部屋は、雑然としていた
本棚とは名ばかりで、ほとんど出しっぱなしの分厚い本
転がるビーカーやフラスコ
怪しげな機械、至るところに繋がれたチューブ
薄暗い部屋に何かのランプが光っている
なんか、喜助さんの研究室みたい…
そこで紫苑は完全に眠りに落ちた
ガラガラッ─
どのくらい経っただろうか
辺りはすっかり日が落ちていた
紫苑は未だ眠り続けていた
部屋の襖が開く音がして、紫苑は無意識にピクリと瞼を動かした
部屋の灯りがつくと、瞼に力が入るものの未だ意識は夢の中だ
「…まだ帰ってきてないか」
慣れた手つきで冷たい水を飲み、流し台に腰をかけ、一息ついた女性
「え?」
紫苑を見つけた女性は、驚きで目を丸くする
「だ、誰!あなた…」
恐る恐る布団の女に近づく
「寝てる…って、ちょっと起きなさいよ!」
何この女…傷だらけじゃない…
「……ぅ…」
揺さぶられ、次第に眠りが浅くなる紫苑
「あなた、どうして喜助の布団で寝てるのっ?」
喜助?
聞きなれた名前に紫苑の胸が鼓動を早める
「あなた、まさか喜助と…」
でも凄い血の痕…
ガラガラ─
再び襖が開く音がした
「ありゃ、もう来てたんスか?早かったっスね」
その人物を見るなり彼女は駆け寄った
「喜助!今日は私との約束の日でしょ?」