第7章 もっと早く助けてあげたかった
沙也加は紫苑を見てニッコリと笑う
「いいこと教えてあげるね♪」
紫苑は唾を飲み込む
「書類濡らしたのも、あなたに水かけるように指示したのも、この子たちにあなたを苛めるように指示したのも、私」
うそ…
だって沙也加さんは、書類の片付けも手伝ってくれたし、水かぶったときも心配してくれて…私を優しく抱き締めてくれて…
「どうして…」
「どうして?あなたに十二番隊から消えてほしいからよ」
"あなたが浦原隊長と仲良くしてるからよ!"
「もしかして、隊長…」
「そうよ。知ってるでしょ?ずっと好きだったの、浦原隊長が。あなたが現れるよりずっと前から」
沙也加さんは少し悲しそうな顔をして話し始めた
「少しでも彼の近くに行きたくて、頑張って鍛練してなんとか五席に昇り詰めたわ。周りはみんな応援してくれた。浦原隊長だって私に優しかったし、隊長と結ばれるのだってきっと時間の問題だった…」
沙也加さんはさっきまで笑っていた顔とは全く別の、冷たい目で私を見ていた
「それなのに…あなたが来てから隊長は私をちっとも見てくれなくなった!何かあれば紫苑さん紫苑さんて!あなたの頼みは聞くのに、私のお願いは他にまわされて!」
こんなことされてるのに、たくさんたくさん苛められたのに、沙也加さんに少し同情している自分がいた
"あなたのせいで傷ついてる人がたくさんいるのよ!"
「ハッキリ言うわ。あなた邪魔なの。十二番隊から、私の前から…消えて?あなたさえ居なければ、隊長はまた私を見てくれる…」
そう言って3人を引き連れて沙也加さんは去っていく
"出ていかないなら、琴乃ちゃんがどうなってもいいわね"
去り際にこんなことを呟いて
紫苑の目からは色々な感情のこもった、涙が溢れていた
沙也加さんが…あんなに優しかった、憧れていた沙也加さんが…
私のせいだ