第50章 そういうのって、どういうの?
第50章 そういうのって、どういうの?
浦原商店ー
「ただいま、鉄裁さん」
地下から商店部分に上がると、鉄裁さんが出迎えてくれた
「お帰りなさいませ、紫苑殿」
鉄裁さんは、畳んだ洗濯物を片付けている途中だ
「喜助さんは…まだだよね。ご飯準備します」
義骸に入りながら、夜ご飯のメニューを頭に思い浮かべる
「お疲れでしょう。よろしければ私が…」
「平気平気!疲れて帰って来る喜助さんのために美味しいごはん作って待ってたいの」
「紫苑殿…なんと献身的な…」
鉄裁が眼鏡の下にハンカチを入れながら涙を拭う中、紫苑は慣れた手つきでエプロンの腰ひもを締めていた
…─
「紫苑さん、喜助さん遅いね」
自分の食器を流しに下げにきた雨が、暗くなる外を見ながら言う
「そうだねぇ、きっと黒崎君の為に頑張ってるんだよ」
「紫苑さんには門限とか言ってるくせにな、店長の奴」
夕食の片づけを鉄裁さんと協力していると、居間でゴロゴロしているジン太が愚痴を言うように呟く
「ジン太くん、奴、とか言っちゃダメだよ」
「へいへい」
片付けが終わるころに、喜助さんからもう少し遅くなると連絡が来た
ふぅ、と肩を落とした紫苑は、お風呂を済ませ、寝床の準備をした
「紫苑さん、おやすみなさい」
「おやすみ」
パジャマに着替えた二人が挨拶にきた
「うん、おやすみ」
鉄裁さんは、喜助さんの研究の一部を進めている
私はこっちに来る前に渡された器具の取扱説明書とにらめっこしている
さすがに一から十まで喜助さんに聞くわけにはいかない
「鉄裁さん、この用語わかる?」
「はい、これはですね…」
さすが、長年喜助さんの助手のようなことをやっていたことはある
ある程度のことなら明確な返事を貰える
私は再び分厚い説明書に目を落とした