第48章 なんだこの可愛い生き物は
確かにかっこいいかも
車の横に喜助さんが立っているだけで数倍カッコよく見えてしまう…
「さ、どうぞ」
なんてドアを開けてくれて座らせてくれるもんだから、緊張しちゃう
「喜助さん運転できるんだね」
「ちゃんと免許取りましたからぁ」
車というものは、なかなか、悪くない
瞬歩は多用すると疲れてしまうけれど、この車は大した労力を必要とせずに人を遠くまで運んでくれる
ハンドルを握る喜助さんもカッコいい…なんて見惚れていたらパチッと流し目の喜助さんと目があって、なんか咄嗟に逸らした
「なーに見てたんスか?」
「見てないもん」
「またまたぁ」
「…カッコいいなぁって」
カッコいいなんて、今までそれなりに言われてきたけど、やっぱり彼女に言われるのは全く違う
それだけでボクの鼓動は早くなる
「紫苑も可愛いっスよ」
そんなこと言って片手をハンドルから離して手を握ってくるもんだから、もう大好き
「わぁ、喜助さん、海!海だよ!」
大きーい!
なんてはしゃいじゃって、本当に可愛い
「喜助さんが作ってくれた海と一緒だね」
「覚えててくれたんスか」
「うん、凄く嬉しかったから」
海について、車を停めると紫苑は一目散にかけていった
「走ると転ぶよ」
「喜助さん早く!」
スニーカーを脱ぎ捨てて裸足になる紫苑
夕日が眩しくて愛しい彼女が見えない
無邪気にはしゃぐ姿
いつまでも見てられるっスね
しあわせ
の四文字が自然と浮かぶ
夕日がほとんど沈みかけた頃、車に乗って帰り道を進む
本当はレストランでも行こうかと思っていたけど、すぐに隣で小さな寝息が聞こえてきた
さすがに疲れたっスよね
寝ている紫苑の手を優しく握った
「おやすみ」
「ふぇ……っ」
夜ご飯も食べずに眠った紫苑は、急に顔を歪め涙を流し始めた
また嫌な夢でも見ているのだろうか
起こしたほうがいいだろうか…
ボクの心の心拍数が上がっていく
「お化け……こわい……」
その寝言に思わず綻んだ
そして無意識にきゅっとボクに抱きついてきた
「よっぽど、怖かったんスねぇ」
ちょっと可哀想だけど、起こすのをやめて抱きつかれていることにした