第47章 胸が張り裂けそうだよ
「何かあったんスか?」
「…二人の想いが通じ合ったの。一人は、もう居ないけど…」
紫苑は察して、と言うように目を少しだけ伏せた
「そうっスか」
それだけ言って喜助さんは優しく笑って、もう一度抱き寄せてくれた
「喜助さん…」
「ん?」
「好きだよ、大好きだよ」
「うん」
ぎゅうっと大きな背中に手をまわす
「気持ちを伝えられるって、当たり前じゃないんだね」
紫苑が誰のことを言っていたのかはすぐに分かった
だから、もうそれ以上は聞かなかった
きっとあまり人に話したいことでは、ないと思うから
それでも、ボクに気を使って少しだけ、話してくれたことが嬉しかった
「好きですよ、紫苑。大好き」
「うん…っ」
涙が出そうになるのを必死に堪えた
このまま、時が止まればいいのに
「さ、お腹空いたでしょ?ご飯できてますよ」
ちょっと早いけど
と、私に合わせて夕食を早めてくれたんだと、すぐに気づいた
「私、着替えてくるね」
「そーいえばどんな服買ったんスか?」
ささっとお店の袋の中を覗こうとするから、私は咄嗟に後ろ手に隠して
「当日までのお楽しみ…ね?」
「えーお預けっスかぁ?」
「喜助さんは先に行ってて!」
ずんずんと背中を押して喜助を居間に誘導すると、足早に階段を駆け上がり部屋に入った
まったく、可愛いんスから
紫苑が階段の上へ消えていくのを見届けると、居間へ入った