第42章 触れると、暖かい
「ちょ、気になるんですけど!阿近さん今日飲み行きましょう!」
「今度な今度」
阿近はすがる修兵を置いてそそくさと室内に入った
…─
「また厄介なもの渡されましたねぇ」
喜助は紫苑が渡された器具を見て、同情の声をあげた
「そんなに大変なものなんですか?」
勇音が自分も少し持ってるそれを見ながら質問する
「まぁ局員でも使える人はあんまり居ないっスから」
「紫苑さん、頑張ってくださいね」
勇音が憐れむような目で紫苑を見ると、当の本人は先程と変わって全く気にしていないような表情をした
「平気だよ。だって私には喜助さんが居るから、ね」
喜助に笑顔を振り撒く紫苑
「照れるっス…」
喜助は思わず顔を染める
その様子を見て紫苑はクスクスと微笑みを浮かべていた
「それにしても紫苑さん、大分体力戻ってきましたね」
勇音の言葉に胸を弾ませた紫苑は、輝く目で聞いた
「そろそろ退院できる?」
期待でいっぱいの紫苑の目を見ると、余計なこと言ってしまったと、後悔する勇音
「それはまだ、ちょっとかかりそうですけど…」
そっかぁ…と口から漏れた言葉に、勇音の胸はチクりと痛んだ
そんな紫苑を見て、喜助は声をかけた
「退院したら、色々な所に連れてってあげますよ」
今の現世を見たら、きっと凄く驚くんだろうな
「色々って?」
「それはお楽しみです」
人差し指を立てて口元に当てて、ナイショの仕草をする喜助さんが、少し可愛い
「え~」
「だからもう少し、頑張れる?」
「うん!」
とびきりの笑顔に安心した喜助は、もう一度、今度は少し強く頭を撫でて、紫苑の部屋に荷物を置いた
「浦原さん」
そして一緒に部屋を出た勇音が、戸を閉めたところで喜助に声をかけた
「すみません、私。紫苑さんに、期待させるようなこと…」
「虎徹サンが気にすることないっスよ」
「浦原さんが居てくれて良かった。私だけだったら、あの後なんて言ったら良かったか…」
本当に、そんなに気にすることはないのに
「退院まで紫苑のこと、よろしくお願いしますね」
「任せてください!」