第42章 触れると、暖かい
第42章 触れると、暖かい
某日─
午前0時42分
浦原商店にはまだ灯りが灯っている
卓袱台を挟んで向かい合う喜助と夜一
「ちゃんと眠れました?夜一サン」
「儂の心配はどうでも良い。さっさと話せ」
組んだ腕を崩さずに、喜助は更に目を伏せた
「…あの子を眠らせた薬の効果は、もう切れているはずです」
それが切れるまでには、迎えに行くはずだったのに
誤算だった
幸いにもボクの作った発信器は、100年もの間機能していて、紫苑が生きていることだけは分かった
「目覚めているはずのあの子が、どうしているか…心配で仕方ない」
「それは儂も同じじゃ」
胸がザワつく
胃に入ったものが全て逆流してきそうな感覚を飲み込んで、平静を保った
「紫苑の様子を…見てきてください」
組んだ腕をほどいて、頭を下げた
「夜一サンにしか、頼めない」
夜一はふっと息を吐いて
「お主は昔から、紫苑のことになると簡単に頭を下げる…悪いクセじゃ」
「夜一サン…」
「喜助に言われなくともそのつもりじゃ」
「ありがとうございます!」
「さ、早よ準備せんか。1時に収集かけるんじゃろ」
…─
ボクの作った100年眠らせる薬は
朽木サンを助けるために
黒崎サンたちが尸魂界に乗り込んだ時にはもう
薬の効果は切れているはずだった
だけど、朽木サンの処刑を止め、帰ってきた夜一サンから驚く言葉を聞いた
「紫苑はまだ、眠っている…」
その次の夜一サンの言葉に、ボクの心が再び熱を持ち出した
「お主を待っているんじゃろ…早く、迎えに行ってやれ」
紫苑が、待っている…
"絶対に迎えに行く"
あの日誓った言葉が響く
「約束…守らなきゃっスね」
藍染が去った後、冬の決戦に備えてボクに総隊長からいくつか指令が出された
それを先に片付け、紫苑を迎えに行く予定だった
打てる策は全て打ち、可能性のあるものは全て残らず備えておく
思い付く限り全ての備えを万全にした
気がついたら、紫苑を迎えに行く前に決戦は始まり、ボクは黒崎サンと共に藍染を捕縛していた
そして覆らないと思っていた四十六室の決定は覆り、ボクの罪状は取り消された